丈夫なtoto big 当選者
根気よく指導し、情熱を持って教えろと言っている私が、じつは一度だけ弱音を吐いたことがある。
日本に来てまだ間もないころのことだ。
私は選手たちにわかるように、やさしく説明し、自ら手本を示して教えてきたつもりだった。
どうしても選手たちが、私の期待どおりに動いてくれない。
そのとき、つい私の通訳をやってくれているS木国弘に「私はもう、彼らに何を教えていいのかわからない」と洩らしてしまったのだ。
今から思えば、そのときの私は情熱を忘れかけていたにちがいない。
弱音を吐いたのは、この一度きりだ。
二度とこんなことは言うつもりはない。
私はこのとき、自分がまだ若く完成されていなっかたころのことを思い出した。
私だって、ヘマをし、言われたことをよく飲み込めないことはあった。
それでも私を指導してくれた人たちは、根気よく私につきあってくれた。
私が日本に、Aントラーズにやって来たのは、自分の持っている技術や知識や経験を日本の若者たちに伝えるためだ。
Aントラーズの選手にも「おれの持っているものは、全部おまえたちに教えてやる」と言ってきた。
ここであきらめるわけにはいかない、そう私は思い直した。
当たり前のことだが、選手が理解していないと思えば何度も繰り返し説明し、自ら手本を示してみせた。
それでもだめなら、練習後の個人レッスンにもつきあった。
彼らといっしょにグラウンドを走り、悪いプレーには怒り、いいプレーは笑顔で迎えた。
Aントラーズの土台は、そうやってでき上がっていったのである。
私の最大の喜びは、選手が成長して活躍する姿を見ることだ。
私自身の仕事の結果を知るバロメーターにもなる。
だから、K崎に加えて、瀞野俊三やI井正忠が日本代表候補に選ばれたときは、自分のことのようにうれしかった。
そういうことの積み重ねが、ファーストステージでのAントラーズの優勝をもたらしたのである。
「チームは、ひとつの鎖の輪だ。
どれかひとつでもはずれてしまうと、輪が崩れてしまう。
だから、みんなでガッチリと固まって輪にならなければいけない」いつも私が選手たちに言っている言葉だ。
もう何百回となく繰り返しているので、私がこの言葉を口にするたびにうんざりしている選手もいるかもしれない。
私はこれからもZーコを言い続ける』Zチームワークこそ、組織を強くする最大の武器だからだ。
私は、たとえスーパースターでも、スタンドプレーは厳しく叱るリーダーは、部下に組織の一員であることを理解させなければならないこの私でも鎖の輪の1個にすぎない。
重要性という点では、他の鎖の1個となんら変わりはないのである。
私は2年にわたって、鹿島Aントラーズを指導してきた。
個のプレーヤーのレベルを高め、目的意識を植えつけ、チームワークを築いていった。
その成果が、ファーストステージ優勝という形で出たことに私は満足しているが、それではまだ十分ではない。
私の最終目的は、AントラーズをZーコ抜きでも勝てる最強のチームにすることなのである。
客観的に見て、私がゲームに参加した場合のプラス効果というものはたしかにある。
長い経験にもとづいたゲームの状況判断には、まださほど狂いを感じていないし、敵の裏をかく瀬ルーパスや得点感覚も、まだまだ若い選手たちに負けはしないと思っている。
また私のゲームへの参加は、敵のディフェンス陣形を崩すきっかけにもなる。
私がゲームにはいると、ボールを持たないにかかわらず、ひとり私専用のディフェンダーがピタリとつく。
あるいは相手がゾーンを敷いているときは、私がボールを持つと3人がかりで私をマークする。
いずれにしても、敵のディフェンダーの注意は私に向けられている。
私がディフェンダーを引きつけておけば、当然中央に穴ができる。
あとは落ち着いて、その穴にパスを出せばいい。
これで、絶好のポジションにノーマークでボールを持てる選手ができるわけだ。
私がゲームに出場した試合での得点は、そういう形で行なわれることが少なくない。
私の最大のウィークポイントは怪我だ。
三度に及ぶ左膝の大手術によって、私は足に爆弾を抱え込んでいるといってもいいだろう。
とても全試合に出場することは無理だったし、そうなると優勝を狙うためには私が参加するプラス効果なしで、勝ち抜かなければならない。
私が鎖の話を何度も強調したのは、このためなのである。
チームの選手全員に、やるのは自分たちひとりひとりなのだということを強く意識させるために、繰り返しZーコとを言い聞かせたのだ。
その成果を試すときは意外に早くやってきた。
ファーストステージ第2節の横浜Fリューゲルス戦で、私は右足に肉離れを起こしてしまい、退場を余儀なくされてしまったのである。
結果から言うと、選手たちはまずまずよくやってくれたと思う。
私が抜けたあと、AルシンドとKルロスが点を取り、Aントラーズ優位に試合が進められた。
だが、後半にはいると動揺が見えはじめた。
1点を返され、防戦一方になった。
ここでしのげるかどうかが今後のAントラーズを占う試金石になる。
選手たちは一丸となってピンチをしのぎきり、終了間際には際谷川祥之が値千金のゴールを決めて勝利を決定づけた。
この試合を乗り切ったことで、選手たちはつながっている鎖の輪を強く意識したはずだ。
ガッチリと固まれば、輪は崩れないのである。
チームへの貢献意識が、鎖の輪を強固なものにするこれまで私抜きのゲームは何度も経験している。
Zーコ抜きでも十分に戦えるように、私は選手たちを指導‐てきた。
ここで試されたわけである。
強固な鎖の輪を作るには、組織ひとりひとりの意識を同じレベルにまで引き上げなくてはならない。
レギュラークラスの選手の意識をあげるのは比較的簡単だが、問題はリザーブの選手の意識をレギュラークラスの選手と同じ程度にあげることができるかどうかである。
できないと、レギュラーが故障なく活躍しているうちはいいが、ひとり欠けるとガタガタと崩れてしまうケースが一シーズンを固定した11人で戦うことは、まず不可能だ。
怪我もあるし、調子落ちもある。
通常十7、8人の戦力をうまく回転させながら戦っていくもある。
Aントラーズの場合で、レギュラーとリザーブの区別はまったくない。
そのときどきのスターティングメンバーとベンチに残るメンバーがいるだけだ。
私は全員にチームの目的と、ひとりひとりの役割を徹底的に理解させた。
その試合のスターティングメンバーだけではなく、ベンチにいる選手である。
ゲームに出たとき、自分は何をしなければ.仏らないのか、どんな役目を負っているのかをひとりひとりの頭の中にインプットしていった。
理解している。
そこで、とえば、85分試合に出ていた者の代わりに、最後の5分試合に出た85分出ていた者以上の活躍をしなければいけない。
チームに貢献するということだ。
そういう意識を徹底させたのである。
Aントラーズの選手たちは、十分に期待に応えてくれた。
交替して出る選手がつぎつぎと大活躍をしてくれたのだ。
例をあげるときりがないが、6月23日のVルディ川崎戦はその好例だろう。
運の悪いことにまた負傷退場してしまった。
2点のリードも追いつかれ、勝負の流れは川崎に向いていた。
一瞬のスキをついて終了12分まえに交代したM賀聡が決勝ゴールをもぎとったのである。
しかも、K賀のJリーグ初得点であった。
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